利休を育てた抹茶matcha

市中の山居

なんと今から約450年前、茶の湯の世界で流行った言葉だ。「茶室」のことである。
千利休が言い出したのかどうかは分からないが、ポルトガルの宣教師が書いた本にも「xichu no sankio」と書かれていることから、このしゃれたコピーは流行語大賞だったことが分かる。
不思議である。車もテレビも工場もなく、騒音源というものがまったくない静かな時代なのに、都会に住む人々はさらなる静寂を求めて、「茶室」に身を置きたかったのか?現代人の私からすると不思議な気もする。
利休は何を思って、茶室にこもったのか?
それは拙著『軍師 千利休』を読んでいただくことにして、私は抹茶が好きだ。作法は我流。
早朝、起き掛けに湯を沸かして一日が始まる。
雨の日も、晴れの日も、嵐の日も、雪の日も、例外はない。
たんなる呑みモノではない。他のドリンクと同列視は不可能だ。
たとえばコーヒー、紅茶は本を読みながら、テレビを観ながら、パソコンを叩きながら、ミーティングをしながら、いや歩きながらでさえも片手間に楽しめる。だが抹茶は別格だ。
少し冷ました湯を注ぐ。 この音だけで気が鎮まる。 茶筅を小刻みに動かす。
キメの細かい泡がふんわりと覆い立ったら茶筅を引き上げる。傍らに置く。気が付けば一つ一つに没頭する自分がいる。
呑むだんになっても、片手などありえない。両手で愛でるように器を包み、決して目を反らすことはない。中身を覗き、味わうのは一口ずつ。集中力が丸ごと抹茶に独占され、滑らかな泡の舌触り・・・芳醇と豊穣のさざ波が立つ。 その時なにを感じるか?
不思議なことに無ではない。永遠に広がり続ける宇宙の辺境(へんきょう)。
もしくはもっと不思議なことに、逆に呑み込まれるようなブラックホールだ。
こうしてミステリアスな神秘の扉が開き、なにかがどんどん湧き起こり、予感一杯の一日に誘(いざな)われる。
大天才利休も抹茶で育てられたと思えば、感慨もひとしおである。

緑の血

茶の湯の師匠はおしなべて健康、そして長寿だ。
統計をとったわけではないが、この故事は背筋がしゃんと伸び、齢100を超え今もなお若々しい裏千家15代、千宗室を見るまでもなく、加治の知る限り当たっている。
利休は、驚くべき頭脳、精神、肉体をもって大名を動かし、知られざる数々の偉業を成し遂げた大革命家だが、人生50年といわれていた1591年、実に69歳、カクシャクとしていた最中、秀吉に切腹を命じられたのである。現代に換算すると、実に113歳である。抹茶こそが創造の担い手であったのではなかろうか。

こだわりの有機

身体は、食べ物で出来ている。
良いモノを摂れば健康に、悪(あ)しきものを食すれば病弱になる。
だがみなさんの多くは、日本の食が世界に類をみないユルい規制により、農薬消費量世界一、添加物の種類世界一、遺伝子組み換え食品の量世界一、トランス脂肪酸の消費量世界一、水道水の塩素量、イギリスの五倍という危険に満ち溢れていることを知らない。
加治は有機派だ。農薬、添加物、遺伝子組み換えの食品をできるだけ避け、水道水は、二重の濾過(ろか)装置を通している。神経質かもしれないが、抹茶の気遣いもかなりだ。
というのも栽培過程がヤバいのだ。
緑茶は、日光をたっぷり注いで育てる日光浴栽培。それでも農薬はたっぷりだ。
そして我らが抹茶。栽培法が異なる。4月から5月の約二カ月間、わざと黒い覆いをかけて日光を遮断。すると茶葉は日光を求めて、上へ上へと急速に伸びるために、葉は太る間もなく薄く柔らかくなって渋みの成分が少なく、旨味成分テアニンの多い高級茶葉が誕生する。
問題は黒い覆いだ。下にできる日陰はいい案配に害虫の絶好の温床となる。したがって農薬をたっぷりと散布する誘惑にかられるのだ。
まっぴらである。農薬、化学肥料は許さない。
そうなると自分で調べないと安心できないたちだから、自分で選ぶ以外になかった。
できあがったのが、有機抹茶『利休楽』である。

期待される抹茶成分による健康アシスト

テアニン

  • リラックス効果

    脳のα波を増加させ、リラックスした状態を促す

  • ストレス軽減

    副交感神経を活性化、ストレスや緊張を和らげる

  • 集中力・注意力向上

    コルチゾール(ストレス・ホルモン)を制御

  • 血圧の調整

    アドレナリン、コルチゾールを制御。高血圧を柔らげる

  • 免疫機能のサポート

    ストレス軽減はストレスホルモンを低下させる

カテキン

  • 抗酸化作用

    細胞の酸化ダメージを防ぐことで老化防止や病気のリスク軽減

  • 抗菌、抗ウィルス

    感染予防に効果。奈良県立医科大学が実験の結果、コロナウィルス不活性化について発表した通り

  • ダイエット効果

    脂肪の代謝を助ける

  • コレステロール低下

    悪玉コレステロールを減少させる

  • 認知症予防

    最近ではストレス軽減、リラックス効果が認知症を遅らせるのではないかという研究発表もある

  • 口臭予防

    カテキンに含まれるフラボノイドは消臭と殺菌のダブル効果

量のこだわり

「利休楽」は1パック20g。
一服、2g程度なので、ざっと10服、10日で使い切る。それ以上の期間だと鮮度に自信が持てないので20gパックにした。些細なことだが、抹茶は湿気と空気を嫌うのでベストだと思っている。

作法はリスペクト

用意するのは

  1. 1湯冷まし器
  2. 2茶漉し
  3. 3茶碗
    加治は、底が広い「楽茶碗」が茶筅を動かしやすく気に入っている
  4. 4茶筅

小さじサラっと一杯(2g)、抹茶を茶漉しに入れる。スプーンの腹で摩って抹茶を漉し落とす。ここが肝心だ。これを怠ると、小さな茶玉ができやすく、欠かせない作業である。
あとは80度くらいの湯を注ぎ、茶筅を細かく動かし泡立てるだけ。 この作業が好きだ。右手の細かな動きがポンプの働きをして、血が脳に昇る実感があり、なんとも快感なのだ。高揚が頂点に達したところで、動作を弱め、優しく茶筅を引き抜く。あとは呑むだけだが、加治は有機米粉など有機づくしの大福を茶菓子にしている。みなさんも好きなものを選んで欲しい。
「儀式」「作法」「形」・・・眺めるぶんには好きだが、自分がその中に入るのは苦手。したがって最初から最後まで我流。
ただし、抹茶へのリスペクト、言い換えれば無限大=0をリスペクト、すべからくこれが加治流である。

なに、分からないって? そう、それでいい。
何がなんだか分からないのが人生だ。
分からないが、万物を愛(め)で、愉しんだ者勝ち!